本建物は、25mプール、50mプール、高さ10mの飛込プールを備えた屋内プール施設である。建物全体の平面形状は約70m×120mで、システムトラスを採用した無柱空間は約63m×92mに及ぶ。約2,500席の観覧席を設けており、大規模な競技にも対応可能である。本施設は一般市民が利用できるとともに、国体の競技会場としての使用にも対応している。
構造計画概要
構造種別は、50mプールおよび飛込プールの上部屋根を鉄骨立体トラス(システムトラス)とし、トラスを支持する架構は鉄筋コンクリート造を基本としている。25mプール周辺は鉄骨鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)とし、架構形式はX・Y方向ともに純ラーメン構造を採用している。屋根は、飛込台上部の有効高さを確保するためアーチ形状としている。
観客席の段床にはプレキャストコンクリート床版を使用し、施工の効率化と品質の向上を図っている。
また、25mプール上部のロングスパン梁は屋根上のスポーツ広場を支持しており、その変形を抑えるため、屋上設備置場の目隠し架構をメガトラス架構とし、ロングスパン梁の変形制御に寄与する構造としている。
『SS7』利用方法
トラス屋根を除く架構については、『SS7』を用いてモデル化し、メガトラス架構については各部材を『SS7』上で個別にモデル化している。地上部は床・梁レベルが複雑であるため、可能な限り実状に即したモデルとするために、モデル上は複数のダミー層を設定しているが、計算上の階数は地上2階としている。
また、2階および屋根面レベルでは層全体の剛床が成立しないため、一部の節点で剛床拘束を解除し、スラブの平面剛性を考慮したブレース置換によって移行せん断を考慮している。トラス屋根の反力は、トラス支点位置に特殊荷重として入力し、構造解析に反映している。
別途検討項目
トラス屋根(システムトラス)は別途検討を行い、その反力を『SS7』に反映している。トラス屋根の支持条件は、鉛直方向および下部構造(RC造)の構面内方向をピン支持とし、構面外方向はベースプレートにルーズホールを設けてフリーとすることで、建物の水平力に影響を与えない構造としている。
また、プールの床版および地下階の一部設備置場はマットスラブとし、FEM解析による応力計算を別途実施している。
確認審査時の指摘事項や対処方法
本建物は梁レベルが複雑で、梁の段差も多いため、柱剛域の長さ、柱・梁の剛性、断面算定位置、危険断面位置、および水平力の伝達機構が適正であることの証明や説明に苦慮した。
また、トラス屋根の各荷重ケースにおける荷重の適切な考慮についても協議を行い、補足説明を加えたが、問題なく申請を進めることができた。
その他
本建物は梁レベルが複雑で、梁の段差も多く、柱剛域の長さや柱・梁の剛性、危険断面位置、水平力の伝達機構の適正性を証明・説明するのに苦慮した。さらに、トラス屋根の支承をルーズとしたことで外装材も縁を切る必要があり、納まりの調整にも工夫を要した。全体として構造計画の難易度が高く、多くの課題に直面したが、その分、得るものも大きく、記憶に残る案件となった。