本建物は、鉄骨造、平屋、片流れの工場です。平面形状は、X方向=25.2m、Y方向=15.0m、高さ=8.3mです。Y方向:ラーメン架構、X方向:ブレース架構で、天井走行クレーン2.8tが2基取り付きます。
基礎には柱と一本杭を一体化するJFEシビル(株)<いちいち基礎工法>を採用し、基礎梁と杭本数を減らすことで、短工期・低コストの建築を実現しました。
構造計画概要
柱・梁はH形鋼を使用し、ラーメン・ブレース架構としています。小屋面は金属板葺きであるため、剛床仮定は成立しないことを前提に剛床解除とし、小屋面の剛性は水平ブレースで評価しています。1階床は土間で、基礎とは縁を切るため、剛床仮定は成立しないことを前提に剛床解除とし、杭と柱を一体化して、剛性は杭と地盤ばねで評価しています。
『SS7』利用方法
『SS7 Premium』の機能である上部下部一体モデルで解析を行いました。
『SS21/SoilBase2008』で地盤データをリンクし、地盤ばねも自動計算で行いました。
<いちいち基礎工法>は、柱と杭を一体化した工法ですが、『SS7』では上部下部一体解析に対応しておらず、これまでは杭部分に1mごとに層を設けて地盤ばねを設定し、杭はRC円形柱を配置して、杭と等価な剛性となるように断面積等を補正し、解析を行っていました。節点数が多くなるため解析にも時間がかかり、また杭径を変更して再検討するたびに地盤ばねも変更しなおす必要があったため、多くの時間と労力がかかっていましたし、入力ミスが発生しやすい状況でした。
また杭に関して、一貫計算内では応力解析のみでしたので、支持力検討、杭の断面検討については別途行う必要がありました。しかし『SS7 Premium』で上部下部一体モデルの解析ができるようになったので、一般の基礎と同じように簡単に配置して検討できるようになり、入力、検討にかかる時間は半分以下になり、入力ミスも大幅に減りました。
『SS7 Premium』の導入にあたり、事前に本建物とは別物件にて、従来の杭部分を1mごとに地盤ばねを設定した解析データと、上部下部一体モデルの解析データを比較してみましたが、応力・変位ともほぼ同じ値となりました。
別途検討項目
水平ブレースの断面検討、杭と柱の接合部については、別途検討にて対応しました。
クレーン走行梁およびバックガーター、ラチスの断面検討は、別途検討にて対応しました。
確認審査時の指摘事項や対処方法
『SS7』で杭をRC円形柱に置換した場合は、適判機関や確認審査機関から、置換した円形柱の耐力(ひび割れ耐力、曲げ耐力、せん断耐力)が杭の耐力と異なるため、耐力の設定方法について説明を求められたり、1mごとに層を設けているため節点が多く、出力図も文字が重なったりして読みづらいため、再出力を求められたり対応に手間取っていました。
『SS7 Premium』で上部下部一体モデルにした場合は、工法、モデル化、解析内容等については指摘もなく、スムーズに完了することができました。