地上3階建て、平面形状は約60m×34mの整形形状で、延床面積約6,000㎡の物流倉庫の計画である。各階の階高は、梁下有効高さを大きく確保するために5.1m~6.5mに設定している。構造種別は鉄骨造、床はフラットデッキ型枠を用いたRCスラブ、屋根は折版、外壁はALC版にて構成されている。 1~3階の倉庫部の積載荷重は床耐荷重にて1.5t/㎡としたヘビーデューティー対応の仕様としている。
構造計画概要
柱は角型鋼管、梁はH形鋼として、XY方向共に外壁面には角型鋼管によるΛ型およびV型ブレースを配したラーメン架構として計画している。
基礎形式は柱位置では杭基礎として、1階スラブ下は地盤改良(浅層混合処理)とすることで床重量は地盤に支持させる計画とした。
構造計算ルートはルート3(保有水平耐力計算)である。
『SS7』利用方法
建物形状・架構形式はシンプルであり特殊な解析等を行う必要はなかったが、設計当時は資材単価高騰の中であり、計画当初より設計各者は建設コストに対する強い意識を持ちながら計画を進める必要があった。
また、用途が物流倉庫ということで、全体建設コストに占める構造部材のコスト比率は高くなる。
いかに構造合理性を追求できるかが重要な項目であり、柱スパンの決定に際しても『SS7』および積算オプション機能を用いながら、数パターンにて鉄骨数量を比較しながら、可能な限り経済スパンとなるよう検証を重ねた。 本例では床耐荷重1.5t/㎡の倉庫として設計したが、初期段階では耐荷重の設定についても確定されておらず、性能とコストのバランスを試算した上で合意している。
確認審査時の指摘事項や対処方法
外周面に配したΛ型・V型の鋼管ブレースの荷重負担条件について、『SS7』では鉛直ブレースの長期軸力負担の有無を選択できるようになっているが、実状どおりの条件設定とされているかの確認が求められた。
使用したブレースは圧縮・引張兼用の鋼管ブレースであること、および積載荷重が支配的であり、ブレース圧縮時には座屈荷重により決定されるケースを想定することが適切であると判断し、ブレースの長期軸力負担を考慮した解析として断面選定を行っている。
その他
計画初期段階にて設計性能と建設コストの関係性を把握することは極めて重要な事項であり、構造設計においても、例えば耐震性能グレードの設定や基礎形式の選定等についても発注者に対する設計説明を経て合意することが理想と考えている。
『SS7』積算オプション機能では、入力計算モデルの形状を認識して、鉄骨・コンクリート・鉄筋・型枠数量等も速やかに集計できることからプロジェクトのコスト試算に役立てていることに加え、過去の設計例との比較を行うことで、その妥当性の検証等にも役立っている。